第25章 結婚指輪を売る

葉山千春から借りた金では、谷口美桜の入院手続きを済ませるのが精一杯だった。

支払い票を見つめるほど、みおの頭は霧が濃くなっていく。――費用は全額、自己負担?

会計窓口へ行って確認して、ようやく理由を知らされた。彼女の保険は停止されている。会社員ではない扱いになっている以上、保険適用もなければ、払い戻しもない。

谷口美桜はこれまで、自分のために民間の保険に入ったことがない。山﨑家の人間にはそれぞれ高額な保険が付いていると知ってはいたが、山﨑蓮が口にしたこともなければ、彼女から求めたこともなかった。

今となっては、答えは単純だ。自分は山﨑家の人間ですらない。だったら、彼らが自分に一円でも...

ログインして続きを読む