第35章 生きる道を残さない

病院の救急外来に漂う消毒液の匂いは、山﨑グループのオフィスに残っていた焦げ臭さよりも、ずっと鼻を刺した。

谷口美桜は救急外来の椅子に腰を下ろし、看護師が慎重に彼女の掌のやけどを処置しているのを、ぼんやりと見つめていた。

ポケットのスマホがぶるぶると震える。表示された名前を見て、ようやく通話に出た。

「遥香」

『薬理学フロンティア』の公式サイトが今日いきなり公開した論文、見た? 私、読んで背筋が寒くなったんだけど。ほとんどあなたのと同じじゃない。どういうこと? それに、下山柚奈って誰? 聞いたこともない」

下山柚奈の論文は公開直後から学術界で話題をさらった。しかも山﨑グループが、その...

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