第53章 彼をよく知りすぎている

山﨑蓮は手術室の前に着くと、手術同意書にサインし、そのまま外で黙って一時間立ち尽くしていた。

点灯したままのランプを見つめる胸の内は、後悔と、自責でぐちゃぐちゃだった。

――あのとき、美桜も連れて一緒に来ればよかった。どうして、もう一言ちゃんと聞かなかった。

やがて、手術室の扉が開いた。

山﨑蓮は反射的に駆け寄る。

「先生……妻は、どうですか」

「食中毒を甘く見ないでください」

松本先生は眉間に皺を寄せ、硬い声で言い放った。

「友人を連れて来る余裕があるなら、どうして奥さんの様子を確認しなかったんです。あと5分遅れていたら、多臓器の出血と機能不全で――亡くなっていましたよ。今...

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