第107章 囲碁道場での出会い

岡本凜太郎はなおも同行しようとしたが、山口夏美はきっぱりとそれを拒絶した。彼女は少し咎めるような視線を彼に向ける。

「さっきから道中、何度も咳き込んでいるじゃない。これ以上、痩せ我慢はやめて。私に風邪をうつさないと気が済まないの?」

岡本凜太郎はむすっとした様子で呟く。

「……違う」

山口夏美の憎まれ口が、実は彼女なりの気遣いであることを彼は知っている。だからそれ以上は食い下がらず、運転手を呼んで帰路につくことにした。

実のところ、中島結子たちはかなり早い時間から現地入りしていた。だが、肝心の伊藤健の居場所がわからない。仕方なくあちこちで写真を撮るふりをしながら、彼の痕跡を探...

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