第110章 惨敗

決勝戦の幕が上がる。中島結子は対面に座る山口夏美を見据えると、自信たっぷりの笑みを浮かべて言った。

「お姉ちゃん、今回はあなたの負けだと思うわ」

山口夏美は平然とした表情を崩さず、口角だけをわずかに持ち上げる。その瞳には軽蔑の色が浮かんでいた。

「やってみれば?」

中島結子は鼻で笑った。

「お姉ちゃん、その自信はどこから来るの?」

彼女はずっと、山口夏美がここまで勝ち上がってこられたのは運のおかげだと思っていた。山口夏美が囲碁を覚えるのは、大学に入ってからのはずだ。それに比べて自分はもっと早くから始めているし、プロ棋士の先生もつけている。先生だって「才能がある」と褒めてくれ...

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