第120章 風のように

山口夏美は彼女を無視し、そのままトナカイの背へと身を躍らせた。手を貸そうとしていた山口豪が、そのあまりに迅速かつ手慣れた動作に目を丸くする。片手を背に置き、あぶみを踏んで軽やかに飛び乗るその姿は、まさに人馬一体——いや、人鹿一体と呼ぶにふさわしい。どうやら彼女には、初めて触れるトナカイさえも即座に乗りこなすほどの豊富な乗馬経験があるようだ。それもそのはず、前世でスタントマンとして危険な乗馬アクションをこなしていた彼女にとって、トナカイを操るなど造作もないことだ。その経験値は、あるいは山口豪をも凌駕しているかもしれない。

ソフィアもまた、その鮮やかな身のこなしに一瞬息を呑んだ。だが、すぐ...

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