第131章 店を叩き壊す

山口夏美が車を降りると、ルースの店の前にはすでに人だかりができていた。彼女は歩み寄り、その中の一人に声をかける。

「ここで何があったんですか?」

人の好さそうな中年の男が、ちらりと彼女を見て親切に教えてくれた。

「お嬢ちゃん、余所から来た人だね? なら、岩井蒼のことを知らないのも無理はない。あいつはこの辺りじゃ有名なボンボンさ。岩井家といえば名家だが、蒼のやつはどうしようもないドラ息子でね、酒に女に博打とやりたい放題だ。この店のオーナーがどうやってあいつの機嫌を損ねたのかは知らんが、ごろつきを何人も引き連れて因縁をつけに来てるんだよ」

事の起こりは先週だ。岩井蒼が通りかかった際...

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