第251章 毒のある河豚

中島結子の淡い期待は、あっけなく裏切られた。前田謙信は彼女の方になど一瞥もくれず、水しぶきを上げて山口夏美のもとへと一直線に泳いでいく。水面は混乱の極みにあり、今日のイベントはドラゴンボートレースから、まるで水上バトルの様相を呈していた。

 落水した瞬間こそパニックに陥った山口夏美だったが、冷たい湖水に全身を包まれると、ふと我に返った。そうだ、私は泳げるんだった。すぐさま自分のボートの方角を見定めて泳ぎだすと、正面から必死の形相で泳いでくる前田謙信と鉢合わせる。彼女は思わず吹き出した。

「あら、先輩も落ちちゃったんですか?」

 普段は冷静沈着な生徒会長が、これほど狼狽した姿を見せるとは...

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