第257章 岡本佐知子の誕生日

山口夏美がオーディションに向かう前、岡本凜太郎の母の誕生日が巡ってきた。岡本家は官僚の家系であるため、派手な宴は避け、親しい数家族だけを招いたささやかな食事会となった。桜市からは、この日のために岡本凜太郎とその父も時間を割いて戻ってきている。公務多忙な一家だからこそ、こうした特別な日はなによりも重んじられ、家族水入らずの時間を大切にするのだ。父の岡本佳行は重責を担う身、食事が済み次第とんぼ返りせねばならない。だが、まだ正式着任前の岡本凜太郎には丸一日の休暇が与えられており、桜市へ戻るのは翌日でよいことになっていた。

 山口家も招待を受けており、夏美は両親に連れられて岡本家の敷居を跨いだ。リ...

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