第277章 ヒロインの待遇

山口夏美の初撮影は、現場の全員に心地よい驚きをもたらした。カメラの前に立っても一切の緊張を見せず、自身の立ち位置や顔の角度を完全に把握し、レンズが最も効果的に彼女の表情を捉えられるよう計算し尽くしていたからだ。通常、順調な滑り出しを切るため、制作陣は難易度の低いシーンをクランクインの最初のカットに選ぶ。しかし、新人であるはずの山口夏美は、そこに座った瞬間に役へ入り込んでいた。監督の指導や誘導など全く必要とせず、まるで百戦錬磨のベテラン俳優のようだった。

鹿能匡志は興奮気味に声を張り上げた。

「アクション!」

記念すべきファーストカットは、見事な一発OKだった。

このシーンで山口夏美の...

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