第32章 「天」号個室

唐宮宴に到着した時、ちょうど中島結子たちがロビーで席が空くのを待っているところに鉢合わせた。

マネージャーがお茶を運びながらやってきた。「申し訳ございません、中島様。前のお客様が少々長引いておりまして、あと十分ほどお待ちいただけますでしょうか」

中島結子は苛立ちを抑え、鷹揚に言った。「構わないわ。でも、時間管理はしっかりしていただかないと。私だってVIPカードを持っているんですから」

木下七海がこくこくと頷く。「そうよ、結子は中島家の長女なのよ。個室を予約したのに、どうして待たせるのかしら」

中山琴子は無料のお茶菓子をひっきりなしに食べながら、クッキーの食べかすを飛ばして尋...

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