第342章 最優秀女優

五明温樹の口調はやや感情的だったが、実際の行動はきわめて冷静だった。もし新人賞の選考から漏れた直後に席を立てば、会場の外でメディアに囲まれ、落選の感想を求められるのは避けられない。それならいっそ、もう少し待って世間の関心が他の賞に移った頃合いを見計らい、こっそり抜け出すほうが賢明だ。そうして待っているうちに、最優秀主演女優賞の発表が始まった。巨大なモニターに秋道逸美の名前と出演作が映し出されるのを見て、彼は深い感慨にふけった。かつては自分が彼女のそばで、主演女優賞の栄誉を勝ち取る瞬間を見届けることを楽しみにしていたものだ。まさか今年になって、彼女がこれほどまでに受賞の可能性を確実なものにする...

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