第49章 全てが欲しい

週末、入部祝いに北村由紀は山口夏美をショッピングに誘った。

山口夏美はついでに花ちゃんを連れて出ることにした。一週間も家に閉じこもっていたので、この小さなヒョウはすっかり参ってしまっていたのだ。

後部座席に座った子ヒョウは少しもじっとしておらず、窓に張り付いて外を眺め、小さな爪で窓を引っ掻いては外に出たがった。

山口夏美は窓の隙間を一切開けず、その湿った鼻先を軽くつつきながら言い聞かせる。

「花ちゃん、これ以上騒ぐなら、次は連れてきてあげないからね。外は危ないんだから!」

花ちゃんはそれを理解したのかどうか、騒ぐのはやめたものの、彼女の指を抱えて舐め始めた。くすぐったくて、...

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