第53章 強制的な売買

「この箱、何も書いてなくて、なんだか特別ですね」岡本凜太郎がペンダントに見惚れているのに気づき、慌てて箱に戻す。「あなたにとって大事なものなんですか?すみません、勝手に触ってしまって」

「観音像はいい。母が好きだったのを覚えている」

岡本凜太郎が近づいてきて、懐かしそうにその琥珀に触れた。「僕が作ったんだけど、気に入った?」

「ええ、とても面白いです。あなたに手先の器用な一面があったなんて」

「じゃあ、君にあげるよ」

「いいんですか」山口夏美は彼の手にある観音像を指差す。「じゃあ、これは要りません」

岡本凜太郎はゆっくりと首を振り、観音像の箱を彼女に押し付け、再び琥珀を取り出して...

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