第87章 新しい靴

先生は眼鏡の位置を直すと、山口夏美を見据えた。「山口夏美、説明しなさい」

「床にいらっしゃる方が、私の友人の足を『うっかり』引っかけてしまったと主張されておりましたので」

山口夏美は冷静に答え、傍らに座る北村由紀を指差して続けた。

「ですから私も、私の手が『うっかり』ぶつかるとどうなるか、彼女とそのお友達に体験していただいたのです。まさか二人とも転んでしまうとは思いませんでしたが……ハイヒールにはあまり慣れていらっしゃらないようですね」

それは先ほど、中島結子と木下七海が口にしていた言い訳そのものだった。山口夏美はそれをそのまま彼女たちに返したのだ。

経験豊富な先生には、小娘...

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