第91章 寄り添い

岡本凜太郎は、山口夏美がその老人と親しげに言葉を交わす様子を、傍らで黙って見つめていた。彼女はどうやら相手を知っているらしく、その態度はいつになく熱っぽい。もし伊藤健の髭が白くなければ、岡本凜太郎は嫉妬でどうにかなっていたかもしれない。もっとも、自分はこのお爺さんよりも魅力がないのかと、いささか複雑な気分ではあるのだが。

伊藤健は心ゆくまで撫で回し、満足げに顔を上げた。

「ありがとう、よく懐いているね」

花ちゃんに夢中で気づかなかったが、目の前の男女は驚くほど顔立ちが整っており、纏う雰囲気も洗練されている。まるで作り込まれた恋愛ドラマのワンシーンのようだ。芸能界に長く身を置き、目は...

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