第93章 遅刻

釣りゲームは午前九時に開始し、十一時に終了する予定だ。集計は生徒会が担当することになっている。

八時五十分。山口夏美と北村由紀は指定された河川敷で落ち合った。その時、山口夏美のスマートフォンが着信を告げる。画面には「岡本凜太郎」の文字。電話に出ると、受話器越しに聞こえる彼の声は涼やかだが、どこか申し訳なさそうだった。

「……悪い。来る途中で事故があってな、三十分ほど遅れそうだ」

「事故」という単語に、山口夏美は思わず携帯を握りしめる。指先に力がこもり、爪が画面を叩いてカチリと乾いた音を立てた。

「事故? 怪我はないの?」

「ハッ、俺じゃねえよ」

電話の向こうで、岡本凜太郎は山...

ログインして続きを読む