第94章 位置を奪う

中島結子が答えようとした矢先、北村由紀の驚きを含んだ声が響いた。

「山口夏美、もう釣れたの!? すごいじゃない!」

その声に多くの生徒が視線を向けると、ちょうど山口夏美が竿を上げているところだった。糸の先には十センチほどの小魚がかかっており、銀色の尾を必死に振って抵抗している。しかし逃げられるはずもなく、山口夏美に掴み取られ、丁寧に針を外されてバケツへと放り込まれた。ピチャリと水飛沫が上がる。

山口夏美は蓋を閉めると、顔を上げて言った。

「ただの運だよ。みんなも辛抱強く待っていれば、すぐに釣れるさ」

北村由紀と木下日奈子が揃って頷く。

「うん! 私たちにも勝ち目がないわけ...

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