第7章:何かがおかしい
ブライオニー視点
金曜日の数学の授業は、いつもどおりひどく長く感じられた。私は窓際の席に座り、教科書の上を陽の光がすっと流れていたけれど、意識は何度も今夜の夕食へと引き戻されてしまう。アルファの家での食事、格式ばった席、あれこれ向けられる期待――考えるだけで胃がきゅっと縮こまった。
隣ではレイラがノートを取るのに集中していた。その真剣な横顔を見ると、ぼんやりしている自分が少し申し訳なくなる。けれど、この不安だけはどうしても振り払えなかった。
もし失敗したら? 変なことを口にしてしまったら?
そのとき、不意に何人もの人影が窓の前を駆け抜け、ぐるぐると巡っていた私の思考を断ち切った。上級生たちだった。顔はこわばり、不安に張りつめている。そしてまた別の何人もが、同じ方向へ走っていく。
「何があったの……?」と、誰かがささやいた。
さらに廊下に足音が響く。私は取り乱した声の断片を聞き取った。
「……幼獣たちの区画が……」
「……制御が利かなくなって……」
「……助けが必要だ……」
心臓がどくんと跳ねた。幼獣たち?
教師が扉へ向かった、その瞬間だった。ひとりの上級生が息を切らして教室へ飛び込んできた。「幼獣の訓練場で異変が起きてる! あの子たちがみんな……完全に手がつけられなくなってるんだ!」
教室がざわめきに包まれた。
「手がつけられないって、どういう意味?」
「幼獣たちが制御を失うなんて、あり得るの?」
「指導役たちはどこにいるの?」
「アルファもほかのリーダーたちも、校舎の反対側にある戦士訓練場にいるんだ」と、その生徒は荒い息の合間に言った。「とても間に合わない。このままじゃ大混乱だ――助けがいる!」
私は反射的に立ち上がった。あの幼獣たちは、まだ五歳から十歳くらいの小さな子どもたちだ。もし何か異変が起きているのなら……。
「ブライ?」レイラも立ち上がる。「どこへ行くの?」
「何が起きてるのか見に行かなきゃ」
「生徒は全員席に着いていなさい!」と教師が声を張り上げたが、すでにクラスの半分は扉のほうへ動き出していた。
私はその指示を無視して廊下へ向かった。レイラがすぐ後ろについてくる。
廊下は落ち着かない空気でぶんぶんと震えているようだった。あちこちの教室から生徒たちがあふれ出し、誰もが一斉にしゃべっている。
「訓練場が壊滅したって聞いた……」
「そんなはずないだろ、ただの子どもたちなのに……」
不安はますます深まっていった。私は歩調を速め、ほとんど駆け足になる。
「待って!」と、後ろからレイラが叫ぶ。
私たちは学舎を駆け抜け、広場を横切った。訓練場にたどり着く前から、もう騒ぎは聞こえていた。子どもたちの泣き声、何かが壊れる激しい音、大人たちの怒鳴るような指示――けれど、その声はまるで届いていない。
まずい、と私の狼が不安げにつぶやく。
ようやく入口までたどり着いたとき、その光景に私はその場で立ちすくんだ。
訓練場はまるで災害の跡地だった。器具はあちこちに散乱し、無残に壊れている。地面も瓦礫まみれで、まるで竜巻でも通り抜けたあとのようだった。
けれど、本当に恐ろしかったのは子どもたちのほうだった。
三十人を超える幼獣たちが、混乱と恐怖に満ちた目であたりを駆け回っている。泣いている子もいれば、金切り声を上げている子もいる。手に触れたものを片っ端から壊している子までいた。
何人かの上級生が事態を収めようとしていたが、明らかに手に余っていた。子どもに近づくたび、その子は逃げ出すか、逆にますます攻撃的になる。
「気をつけろ!」と、誰かが叫んだ。
七歳くらいの男の子が木の棒を振り回し、訓練用の器具を叩き壊していた。その力は、とても普通の子どもとは思えないほど強い。
「うそでしょ……」と、隣でレイラが息をのんだ。「あの子たち、どうしちゃったの?」
「力の覚醒が暴走してるのよ」と私は言い、混乱のただ中を見渡した。「自分で制御できてないんだわ」
さらに生徒たちが入口に集まってきた。けれど、そのほとんどはただ立ち尽くして見ているだけだった。どうすればいいのか、誰にもわからない。幼獣たちは今や人ならぬ力を手にしているのに、心はまだ子どものまま――自分の身に何が起きているのかさえ、受け止めきれずにいるのだ。
そのとき、血の気がすうっと引く光景が目に飛び込んできた。校庭の隅に、何人もの子どもがぴくりとも動かず横たわっていたのだ。
心臓が沈んだ。怪我をしている? それとも――もっと悪いことに?
深く息を吸い込み、動く覚悟を固める。
「ブリ、だめ!」レイラが私の腕をつかんだ。「危なすぎる!」
「誰かが助けなきゃ」私はやさしく腕を引き抜いた。「あの子たち、私たちが必要なの」
怯えきった子どもたちを見ていると、胸の奥で何かが獰猛に目を覚ました。怖くて混乱しているのに、誰も助けようとしていない。
『準備は?』私の狼が問いかけてくる。
『できてる』
私は混沌の中へ飛び込んだ。
校庭に足を踏み入れた瞬間、小さな女の子が私にぶつかりそうになった。しゃくりあげて泣きながら、両手を必死に振り回している。そのたびに風がごうっと巻き起こった。
「ねえ、エイミー、大丈夫だよ」私は言った。いつもは素直で可愛い六歳の子だとわかったから。
けれど、彼女には届かない。目は虚ろで、頭の中を食い尽くす恐怖のどこかに囚われている。
周りの子どもたちも同じだった。見えない怪物に追われているみたいに走り回り、器具を引き裂くように壊す子もいれば、地面に転げ回って叫ぶ子もいる。危険な力で押し合う子も少なくない。
上級生の一人が、八歳くらいの男の子を捕まえようとしていた。「走るな! いいから話を聞け!」
少年はさらに暴れ、次の瞬間、年上の生徒のすねを蹴り上げた。その一撃は凄まじく、相手は膝をついた。
「くそっ、なんでこんなちびっこがこんなに強いんだよ……」上級生がうめいた。
反対側では、女の子が身を寄せ合ってうずくまる子たちに近づこうとしていた。「大丈夫だよ、怖くないから……」
だが、子どもたちは互いにしがみついたまま震えるだけだった。近づこうとする動きがあるたび、悲鳴はいっそう大きくなる。
私は素早く状況を見極めた。普通の声かけじゃ通じない――この子たちは純粋なパニックに閉じ込められている。思考は閉ざされ、残っているのは恐怖だけ。
『まずは順番だ』狼が念を押す。『倒れている子たちを』
そうだ。まず、あの子たちの安全を確保しないと。
私は深く息を吸い、長年で身につけた敏捷さのすべてを使って騒乱の中を縫い始めた。かわす、転がる、切り返す――制御のきかない子どもたちを避けながら、意識のない子たちに辿り着くには、一つひとつの動きが完璧でなければならない。
左から男の子が突進してきた。私は進路から宙返りで外れ、着地した瞬間、別の子がむやみに腕を振り回してきた。身をかわして前に転がり、低い姿勢を保つ。
ようやく倒れている子たちに辿り着く。手早く確認すると、呼吸はある――意識を失っているだけで、目立つ外傷もない。けれど、この危険な騒ぎの中に寝かせておくわけにはいかない。
私はいちばん小さな女の子を抱き上げた。
「レイラ!」喧騒に負けないよう叫ぶ。「受け取って!」
彼女はすぐに理解し、サイドラインで両腕を広げた。私は慎重に子どもを手渡す。「安全なところへ! 大丈夫か確認して!」
「任せて!」レイラは女の子を受け取り、素早く校庭の外へ下がった。
私は残りの子たちのもとへ戻る。ひとり、またひとりと、意識のない四人の子どもを運び出し、レイラと他の女の子たちが状態をチェックしてくれた。
「どう?」私は息を切らしながら尋ねた。
「気を失ってるだけ」レイラの声にははっきり安堵が滲んでいた。「バイタルはみんな正常。でも熱がある」
私はうなずき、まだ続く混乱へ視線を戻した。残った子どもたちは依然として恐怖の中に閉じ込められたまま。落ち着かせる方法を見つけなければならない。
でも、こちらの声すら届かない子どもたちを、どうやって諭せばいい?
『あの子たちには、意識を向ける先が必要だ』狼がふいに言った。『注意を引きつける手段が』
