第241章

水原蛍は、受話口から聞こえてきた懐かしい声に耳を澄ませた。

「ベン・エーブル?」

軽やかな笑い声が返ってくる。

「俺の名前、まだ覚えていてくれたんだな。会社から日本出張を命じられてさ。当分、いや、うまくいけば日本と提携して、そのままずっと日本にいられるかもしれない。空港まで迎えに来てくれてもいいんじゃない?」

断ろうとした言葉が、喉の奥でつかえる。

異国で右も左も分からなかった頃、誰より助けてくれたのは彼だった。引っ越しのたびに汗だくで手伝ってくれたこと。子どもたちにも、いつも気を配ってくれたこと。──あの人がいなかったら、自分はあの国で到底踏ん張れなかった。

「いつ着くの?」

...

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