第250章

 社交界で名の知れた令嬢たちや御曹司たちが、次々と声をかけてくる。そのたびに、水原美香の胸は、これまで味わったことのない充足感で満たされていった。

 ――こんな人たち、本来なら一生縁なんてないはずなのに。

 たとえ高橋家の奥さんの座は手に入らなかったとしても、綾辻家お嬢様という肩書きさえあれば、この先この世界で十分やっていける。そう思えば、十分すぎるほどだ。

 けれど、分かっている。これは、本当は自分のものじゃない。

 他人の人生を覗き込んで、借り物の衣装に身を包んだ道化にすぎない。滑稽で、哀れな――そんな自嘲が、喉の奥で苦く渦を巻く。

 綾辻音はシャンパングラスを手に、ざわめく会...

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