第271章

水原美香は、いまなら彼らの言葉もなんとか聞き取れる。そこにモースの周りの人間の数だ。彼が何を考えているか、わからないはずがない。

「セシル、あいつらの言うことなんて聞かなくていいわ、私なら――」

セシルは手を上げ、その言葉を制しながらモースを見た。

「もし、あんたがお金を分けてくれるって言うなら……」

そう言いながら、じりじりとモースに歩み寄っていく。そして水原美香が崩れ落ちそうになった、その瞬間――セシルは足を振り上げ、砂埃をどっと巻き上げると同時に、くるりと身を翻し、水原美香の腕を引いて駆け出した。

すべては一瞬の出来事だった。モースたちが「はっ」と我に返った時には、セシルはす...

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