第275章

高橋逸人は彼女の手を振りほどき、駆けだした。その背中を追うように、周囲の人間も次々と走り出す。

天城古雅は水原羽の横を通り過ぎる瞬間、何気ないふうを装いながらちらりと視線を向けた。暗い、底の見えない目だった。

もし祈りに意味があるのなら――

水原蛍なんて、このまま死んでしまえばいい。二度と目を覚まさないでほしい。

高橋逸人は、ようやく水原蛍の姿を見つけた。みるみるうちに目のふちが赤く染まっていく。

水原隆一が娘の一大事を知らされたときには、すでに病院へ運び込まれたあとだった。

高橋逸人は取り乱した様子で、救急外来の前を落ち着きなく行ったり来たりしている。

宇一と静留は泣きじゃく...

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