第79章

水原蛍は夢にも思わなかった。あの時の無意識な反論が、今では彼が自分を手玉に取る材料になってしまうなんて。

「そうよ、私はあなたを騙していたの。私の口に真実なんてないわ。五年前だって海外に行きたかっただけ、あなたと結婚したくなかった。あなたはクズ男だと思ってたし、五年経った今見ても、やっぱりクズ男じゃない!」

「俺のどこが渣だって?」

「あなたは水原美香と五年間一緒にいて、今度は私を追いかけて、それでも彼女を諦めない。クズ男じゃなくて何なの?」

高橋逸人は真剣な眼差しで水原蛍を見つめた。「真面目に言うが、この五年間、俺は水原美香とは何もしていない!保証する」

「その言葉、自分で信じて...

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