第227章 覚えていない

藤原深は一瞬呆気にとられたが、すぐに林田ククの顔をじっと見据え、表情を和らげた。口の中のものを丁寧に味わい、飲み込んでから、素っ気なく言った。

「まあまあだな」

林田ククは眉をひそめ、不満げに口を尖らせる。

「なによそれ。すごく美味しいのに」

藤原深の口から褒め言葉を聞き出すのは、天に昇るよりも難しいことだ。

彼女はまた箸でおかずをつまみ、こぼれないように下に手を添えて、藤原深の口元へ差し出した。

「じゃあ、これも食べてみて」

藤原深は躊躇なく口を開けて食べたが、感想は相変わらずだった。

「まあまあだ」

林田ククの手料理には及ばない、ということだ。

口の減らない男だと分か...

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