第269章 林田クク以外とは結婚しない

「彼女は来てないわよ。きょろきょろしないで、私一人なんだから」

 朝日明美はバッグからキャッシュカードを取り出すと、藤原深に突き出した。

「ほら、これ。ククちゃんからの返金よ。昨夜あなたが振り込んだお金、全部入ってるから。暗証番号は彼女の誕生日だって」

 彼女は一呼吸置いてから付け加えた。

「ああ、それと。お金を下ろしたら、そのカードは返してね。ククちゃん、まだ使うそうだから」

 藤原深はカードを受け取ろうとせず、得体の知れない眼差しを向けた。しばらくして、彼が重い口を開く。

「俺がやった金だ。回収する理由はない。……あいつ、下にいるんだろ? 迎えに行く」

 林田ククが明美を一...

ログインして続きを読む