第275章 誘惑する

その言葉を聞いて、青山静は眉をひそめた。

「少しは頭を使いなさい。あの佐藤時言が、林田ククのような女を相手にするわけがないでしょう? それに、彼女はあなたの兄の嫁よ。友人の妻に手を出すなんてありえないわ」

青山静はジョウロのレバーを二回ほど押し、葉に水が均等にかかるのを見届けてから言葉を継いだ。

「百歩譲って佐藤時言が気に入ったとしても、佐藤家が許すはずがない。バツイチ同然の女を受け入れるような家柄じゃないのよ」

それに、と彼女は思う。林田家は今、泥沼状態だ。解決すべき問題が山積みになっているこの時期に、林田ククに不倫などしている余裕があるとは思えない。

数枚の写真には、ただ二人が...

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