第364章 誘惑

藤原深は彼女をきつく抱き締め、唇を耳朶に寄せて、掠れる声で懇願した。

「行くな……!」

林田ククは眉をひそめ、必死に身をよじる。

「触らないで。放して! 藤原深、手を離して!」

暴れれば暴れるほど、藤原深の腕はさらに強く回り、息が詰まりそうになる。

やがて林田ククは動けなくなり、苦しげに彼の胸をぱんぱんと叩いた。

「藤原深……少し緩めて。息、できない……」

その言葉に、藤原深ははっとして力をわずかに抜いた。だが、完全には放さない。

「大丈夫か? 悪い……力、加減できなかった」

林田ククが怒って出ていくのが怖くて、だからあんなふうに締めつけたのだ。

林田ククはようやく呼吸を...

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