第385章 オーディション

五分後、テストは始まった。

林田ククは深く息を吸い、再び視線を上げる。瞳に宿っているのは、薄い死の気配だけ。

隣で急きょ相手役を務めるアシスタントが警官役として、鋭い声で詰問した。

「毒を盛ったのは、お前か!」

林田クク——正確には椎名花梨は、水面のように静かな顔で警官を見やり、ぽつりと言った。

「ええ」

捕まった動揺は欠片もない。言い訳するというより、重い荷を下ろしたあとの安堵に近かった。

菅野監督は表情を動かさぬまま背筋を正し、瞬きもせずに見据える。

竹田彩乃は椎名花梨の目にある死んだような静けさに気圧され、しばらくしてからようやく涙を滲ませた。雨に濡れた花のように揺れる...

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