第495章 前の恋人

ティリタはファッション界で揺るぎない存在だ。長年にわたり、名だたるファッション誌の編集者がもし本人に会えたなら、インタビューではこれでもかと大きく扱う。下手をすれば、その号の格まで上がるほどに。

だからこそ、彼女の作品の価値は言うまでもない。

林田ククの耳元で揺れるそのイヤリングは、水原心柔が棚いっぱいに並べたアクセサリーを全部合わせても、はるかに高い。

というより――ティリタの作品は、すでに世俗的な金額の尺度を超えている。黄金の骨董品にも比肩する、値上がりする前提の収集品だ。

そんな稀代の宝を身につけている林田ククに向かって、水原心柔が「アクセサリーをあげる」などと言うのは、笑い話...

ログインして続きを読む