第500章 計略

川崎玲奈は心臓がどくんと跳ね、身動きできなくなる。けれど胸の奥は、ひどく浮き立っていた。藤原深が自分から彼女の手を取ったのは――これが初めてだった。

次の瞬間、藤原深は眉をひそめて手を放し、今度は自分の襟元をつかむ。息苦しくてたまらない、とでもいうように。

意識がまったくないわけじゃない。ただ、目の前の相手が誰なのか判別できず、耳に入ってくるのもブーンとした雑音ばかりだった。

さっき、頭の上にひやりとした感触があった。反射的にそれをつかんだが、触り心地が違う。生理的な拒絶が胸に湧き、無意識に手を離してしまう。

暑い。息が詰まる。

藤原深は首を締めつけるネクタイをほどこうとしたが、力...

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