第520章 かわいい

藤原深はつい唇の端を吊り上げ、少し考えてから訊いた。

「じゃあ、数日後の月見のとき迎えに行く。俺と一緒に過ごせ」

月見――その言葉を聞いた瞬間、林田ククの笑みがぴたりと固まる。

今年も、これから先も。もう、思い描いていた月見は叶わない気がした。

藤原深の足を自分のせいで止めたくなくて、彼女は文字を打ち、やんわり断る。

「たぶん休み取れない。あなたは帰って、おじいさまと一緒にいて」

藤原深は「じゃあ祖父さんのところに――」と打ちかけて、林田ククのメッセージを見た途端、黙って全部消した。

祖父に会いに行くなら、藤原家の旧宅へ戻ることになる。

本人が望む望まないに関係なく、藤原家の...

ログインして続きを読む