第583章 恩を仇で返す

藤原深はスマホを少し遠ざけた。

川崎司光の怒りは、まるで収まる気配がない。

「俺はお前を見損なった。藤原家をまとめられる、多少はやる男だと思ってたのに。まさか自分の恋人すら守れないとはな。今すぐ、こっちで引き取る」

言えば言うほど火がついていくのが、声だけで分かる。藤原深はエプロンの紐を結び直してから、ようやくスマホを手に取った。

「兄さん、心配すんな。大したことじゃない。相手はもう警察に引き渡した。あとは俺が追う。ククちゃんも機嫌は悪くなさそうだし、さっき『魚のスープ、教えてあげる』ってさ」

腹の底に溜めた怒りをぶちまける寸前で、拍子抜けするほど淡々とした返事が返ってきた。川崎司...

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