第593章 手配が行き届く

服飾業界に身を置く者なら、柚木遥という名を知らないはずがない。

いま最前線で活躍するデザイナーで、自身のインディーズブランドを持ち、パリコレで一躍話題をさらった存在だ。林田ククは彼女のデザインが好きで、新作が出れば藤原深が「それとなく」手に入れて贈ってくることもあった。

とはいえ林田クク本人は柚木遥と直接の面識などない。そもそも、今日この場に彼女が来るなんて聞いてもいない。

誰かが、気を利かせたのだろう。

林田ククが藤原深のほうへ視線をやると、彼は眉を上げ、目元にうっすらと得意げな色を浮かべた。

この人、急に気が利くじゃない。

――いや。前から、こういうことを黙ってやる男だったっ...

ログインして続きを読む