第604章 まずい

川崎務は唇をきゅっと結び、もう一度制した。

「今日はやめとけ。あいつら、まだしばらくいる。会う時間は……あとで俺が作るから」

――自分でも、それが叶わない約束だと分かっているくせに。

椎名愛麗の声が、瞬時に詰まった。

「そんなふうに私をあやすみたいなこと、言わなくていい……。あなたも、私が先に歩み寄るのはよくないって思うなら、もう二度としない……」

あまりにも哀れな言い方だった。

川崎務は、彼女だって家とうまくやりたくてやっているのだと思うと、胸がきゅっと痛んだ。仕方なく、低い声で言う。

「……じゃあ、少しだけ顔出して、二言三言で帰れ。長居するな」

そのひと言で、背後の空気が...

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