第608章 血

外には、いつでも後ろ盾になれる人間が必要だ。朝日明美は佐藤時言をちらりと見た。彼が一緒なら、林田ククが傷つくことはないだろう。そう判断して頷き、引き返す。

林田ククは早足で佐藤時言に追いつき、横目で確認する。

「どこ? 時間、ムダにしないで」

佐藤時言は彼女の前へ一歩で出て、迷いなく先導した。

古い団地の最上階。廊下は打ちっぱなしのコンクリートのまま。外には色とりどりの洗濯物が揺れ、鉄の扉はまだらに錆び、壁はところどころ剥がれている。ここに住むのは、引っ越しが面倒な年寄りか、仮住まいの若い連中がほとんどだ。

「離して!」

女の悲鳴が飛んできた。

胸の奥がきゅっと縮む。林田ククは...

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