第103章

彼は精巧な木箱から指輪を取り出すと、そっとテーブルに置き、千鳥凪紗の目の前へと滑らせた。

それはデザインの凝ったピンキーリングだった。プラチナのリング部分は茨の形を模しており、細密な棘が複雑に絡み合っている。一見すると危険な印象を与えるが、同時に不屈の美しさを秘めていた。

「これは君の母親の形見だ」

瀬戸庄司の声は柔らかかった。

「彼女はよく言っていたよ。女の子は茨のようでなければならない、とね。棘があってこそ、自分を守れるのだから」

千鳥凪紗の視線はその指輪に吸い寄せられ、指先が微かに震えた。

母の、形見……。

それは彼女の心の湖に小石を投じたかのように、静かな波紋を広げてい...

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