第198章

二人の間に甘い雰囲気が漂い始めたその時、遠くから短い足を一生懸命動かして、二つの小さな影がパタパタと走ってきた。二人は左右から千鳥凪紗の太ももにガシッと抱きつく。

「ママ!」

羽菜が小さな顔を見上げ、甘えるような声を出す。

辰樹も同様に、千鳥凪紗の手を握って離そうとしない。

先ほどまでの温情あふれる空気は、一瞬にして霧散した。

藤野拓介は足元のこの二人の子供を見下ろし、その端正な顔に珍しく亀裂が入ったような表情を浮かべた。

ようやく妻と二人きりの時間が作れそうだったのに、このチビどもが邪魔をしに来るとは。

「椎名水緒」

藤野拓介の声が低く沈んだ。

「はい!」

椎名水緒はビ...

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