第35章

柚木文乃は言葉に詰まり、照れくさそうに鼻をすすって涙をこらえた。

それを見た椎名水緒は、笑みを浮かべて彼女の手を取り、ソファへ促した。

「ほらほら、無事だったんだから万々歳よ。もう泣かないの。これ以上泣かせたら、凪紗姉ちゃんが心痛めちゃうわよ」

手首が触れ合った瞬間、柚木文乃は反射的に身を縮こまらせ、鋭く息を吸い込んだ。

ほんの些細な反応だったが、椎名水緒の目はそれを見逃さなかった。

彼女はさりげなく手を離し、視線を柚木文乃の腕に走らせてから、明るく笑ってみせた。

「二人とも積もる話があるでしょうし、私、何か食べるものでも買ってこようかな。何がいい? この近くに美味しいお店がある...

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