第37章

精神安定剤の効き目は抜群で、千鳥凪紗は泥のように深く眠り、外界の喧騒から完全に隔絶されていた。

再び目を開けたとき、窓の外はすでに明るく、翌朝を迎えていた。

鼻先をくすぐるのは、食欲をそそる香りだ。温かい粥と、出汁の混ざり合った匂い。彼女は一瞬呆気にとられたが、布団を跳ね除けて寝室を出た。

こぢんまりとしたオープンキッチンに、藤野拓介が立っていた。

彼はシンプルな黒のTシャツにスウェットパンツというラフな格好で、袖を肘まで捲り上げ、引き締まった二の腕の筋肉を露わにしている。

窓から差し込む朝日が彼の広い背中に落ち、その輪郭を柔らかく縁取っていた。藤野拓介はお玉を手に、鍋の中の粥を真...

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