第71章

藤野蓮司の地位は、この街でもトップクラスだ。その彼に誰が取り入ることなどできようか? 梅原慎一が千鳥凪紗の一件で関わりを持たなければ、手出しさえできなかっただろう。

せっかくできた縁だ、有効活用しなければならない。

桂田秀蘭はその言葉に反論できず、言葉を詰まらせた。彼女は悔しげに歯噛みしたが、最終的には妥協した。

「……分かりました」

翌日の午後二時、千鳥凪紗の元に桂田秀蘭から電話があった。

着替えて階下へ降りると、遠目に一台の黒いベントレーが路肩に停まっているのが見えた。

ドアが開き、ベージュのセットアップに身を包んだ中年女性が降りてくる。

四十代半ばだろうか、手入れの行き届...

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