第76章

その考えに背筋が凍りつき、千鳥凪紗はアクセルを床まで踏み込んだ。

急いで病院に駆けつけ、病室のドアを押し開ける。しかし、目に飛び込んできたのは、予想とはまるで異なる光景だった。

窓明かりが差し込む清潔な病室で、藤野拓介はベッドに背をもたせ、ストライプの病衣姿でタブレット端末を手にしていた。どうやら何かの書類に目を通しているらしい。

額の端に小さなガーゼが貼られ、手の甲に浅い擦り傷がいくつかあるのを除けば、彼の精神状態はすこぶる良好に見える。それどころか、彼女の無遠慮な侵入に対して不機嫌そうに眉をひそめてさえいた。

その深淵のような瞳が持ち上がり、凪紗を認めると、眼底にあった苛立ちは一...

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