第81章

数日後の定時間際、オフィスにはいつもと違う張り詰めた空気が漂っていた。

千鳥凪紗は最後の書類を片付けると、腕時計に視線を落とし、辰樹を迎えに行く時間を計算した。

この数日、あの子という小さな存在に満たされた生活は、忙しくも充実していて、病院にいるあの幼稚な男のことなど忘れかけていたのに。

「聞いた? ウチのグループ、買収されたらしいよ。しかも、あの最高執行責任者が直々に乗り込んで来たって」

「それって、藤野家の若様、藤野蓮司のこと? ずっと海外の本部にいたんじゃなかったっけ?」

「さあね。来た早々、会議室で副社長の藤野天嘉とやり合ったらしいわよ。フロア中に怒鳴り声が響き渡ってたって...

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