第8章

紗枝の視点

月曜の午後二時、予約時間きっかりにクリニックに着いた私は、ここ数ヶ月で一番軽い気分だった。二週間前のあの物置での和解が、すべてを変えたのだ。私たちはヨリを戻した。まだ、公にはしていないけれど。

『こういうこそこそした関係って、なんだかワクワクする。高校生に戻ったみたい』

真里亜さんは私を見て微笑んだけど、その目には何か秘密を知っているような、意味ありげな光が宿っていた気がする。「鈴木さん、逸見先生が治療室でお待ちです」

「ありがとう」冷静を装ったけれど、心臓はすでに高鳴っていた。

『落ち着いて、紗枝。誰にも気づかれちゃだめ』

見慣れた治療室のドアを押して開けると、光代...

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