第1091章

一方、レックスはヒルダに追いつくと、自分のビーニーをひったくるように奪い返した。

「返せよ。これ、トーマスが買ってくれたんだぞ! ダメになったらどうすんだ!」

彼はぶつぶつ文句を言いながら、まるで糸がほつれてしまうのではないかとでも言うように、愛おしげにビーニーについた埃を払った。

ヒルダは呆気にとられ、ただ彼を見つめるしかなかった。

(この駄犬、一体どうなってるの? 彼とトーマスの間には何があるわけ?)

(トーマスは口を閉ざしているし、こいつはとぼけてる。養子まで迎えて一緒に住んでいるのに、なんでまだ何の進展もないのよ?)

(さっきまで女の子と楽しそうに話してた癖に、今はトーマス...

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