第1115章

エリザベスが正面玄関を見張っていたとはいえ、そこはネイサンの縄張りであり、秘密の出口がないはずはなかった。ヒルダは今、まさにそのルートを使ってジェロームを外へ逃がそうとしていた。

彼女はこっそりとジェロームの様子をうかがった。彼の顔は赤く上気し、今まで見たこともないような輝きを放っている。まるで別人のように生まれ変わったかのようだ。

(昨夜は二人で素敵な夜を過ごしたみたいね……)

ヒルダは父とどう顔を合わせればいいのかわからず、気まずさから無関心を装った。秘密の出口まで案内すると、彼女は言った。「少し待てば、誰かが迎えに来ますから」

ジェロームは微笑んだ。「自分のことは自分でやるよ」

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