第1216章

泣きながらお土産を配るルナの姿を見て、誰もが胸を張り裂かれるような思いだった。お土産を配り終えた後、彼女は選りすぐりの美しい杏(あんず)をいくつか、そっと脇によけた。自分で食べるのを惜しんでいるようだったが、誰にあげるつもりなのかは誰にもわからなかった。

ヒルダは一晩中、甲斐甲斐しくルナの世話を焼き、その夜はルナの隣で眠った。

ネイサンが帰宅したのは、夜もだいぶ更けてからだった。家に戻ると、ヒルダとルナが寄り添って眠っている姿が目に入った。大きな恐怖を味わったせいか、ルナは母親の腕をしっかりと握りしめて眠っている。その目尻には、まだ涙が滲んでいるように見えた。

最初は眠っているのだと思っ...

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