第1264章

ヒルダにとって、それはこの上ない朗報だった。

だが、アンソニーにとっては真逆だった。現在、彼は教会のネズミのように貧しかった。大学の講師とはいえ、まだ試用期間中で、わずかな給料で食いつなぐのがやっとの状態だ。それなのに、ドナのような装備を手に入れるには数百万が必要で、その上、人工ペニスも自分で探さなければならなかったのだ。

ネイサンは金を貸してくれるどころか、勝手に他の暗殺依頼を受ければ半殺しにされかねない。ヒルダからの依頼を受けて有頂天になっていた矢先、報酬が支払われる前にターゲットが流産してしまったのだ。

「はあ……」

彼は深くため息をついた。

一方、知らせを受けたヒルダは、現場...

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