第170章

ヒルダは車を走らせ、とある宝石店へと向かった。

彼女はネイサンに指輪を贈りたかったのだ。結婚してもうすぐ一年になるが、ネイサンが既婚者であることを示すものが、他には何もなかったからだ。夫に向けられる他の女たちの視線を思うと、彼女は居ても立ってもいられなかった。

そこで、プロジェクトを手伝ってくれた彼への感謝の印として、指輪を贈ることに決めたのである。

店に入ると、彼女はすぐにVIPルームへと案内された。身につけているドレスとバッグだけで、彼女が只者ではないことは販売員たちにも十分伝わったのだ。

一般フロアに並ぶ指輪もちらりと覗いてみたが、それらもまたこの世のものとは思えないほど美しかっ...

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