第172章

「スティーブンソン様、いらっしゃいませ。私がこちらのシニア・セールス・スタッフを務めております。本日はどのような指輪をお探しでしょうか?」

店員が自らを「シニア」と名乗るのを聞いた瞬間、スティーブンソン夫人は鼻高々な気分になった。ここは世界最大のジュエリー産業を誇る場所であり、販売員たちは顧客のランクに応じて明確に格付けされているのだ。

私たちのような上客には、店で最高ランクの販売員がつくのが当然だわ。

すると、カルメンはヒルダの手を強引に掴み、意気揚々と店の中へと入っていった。

そこは、誰でも気軽に入れるような店ではなかった。店内の客はみな極めて裕福そうで、身なりも洗練されている。

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